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「ハチ公」

更新日:2019年11月23日

先日10月27日にポーランドはジェショフ、Teatru „Maska" w Rzeszowieにて『ハチ公』の初演上演を無事に終えることができました。制作過程においては厳しい状況も多々ありましたが、結果的に本当にいい作品に仕上がったと思います。沢山の方々に見て頂けることを願っています。(>web)



脚本・演出:Ewa Piotrowska 舞台美術:Yumi Hayashi

音楽:Wojciech Błażejczyk

俳優:Anna Kukułowicz, Kamila Olszewska, Agata Słowik, Robert Luszowski, Bogusław Michałek, Maciej Owczarek


今回は初めてタグを組むことになった演出家・Ewa Piotrowskaさん。私より少し年上の彼女とこのプロジェクトを通して知り合えたのは凄く良かったです。本当に勉強になりました。


Ewaさんは、ポーランドで一番歴史の古い人形劇場、ワルシャワにあるTeatr Bajの専属演出家です。ポーランドにある名門の人形劇を学べるビャウィストクにあAkademia Teatralna大学を卒業し、2005年から2008年は今回『ハチ公』の公演があるTeatru „Maska" w Rzeszowieの芸術監督。2009年よりTeatr Bajで働いています。多くの賞を受賞し、演出作品は、沖縄で開催されている人形劇フェステバル、リッカリッカを初め世界各国のフェステバルに招待されています。また、ロシア、メキシコ、リトアニアなどポーランドに収まらず、様々な国で演出もされています。


今まで色んな女性演出家と組んできました。


チェコ人の演出家ゾヤ・ミコトバーさんの演出は、手の指先から見えない糸が伸びている感じ。藤田和日郎さんの『からくりサーカス』のようなイメージで、役者、照明、音響の方々を糸で手繰りながら操っていくような。凄くしなやかなだけど、力強い糸が全体を包み込んでいるような感じ。


アメリカ在住の演出家・芦澤 いずみさんは、アマゾネス。ご本人がもの凄い勢いで(血まみれになりながら)一番先頭を走って、みんながその後に、ついていかねばー!というような感じ。


今回のエヴァさん。一言で言うならば「女帝」かなと。決断力と全体を仕切る能力と、絶対君主的なパワーがあり、本当に頼もしく強い女性でした。


あくまでも、私が一緒に仕事をしてみてな感覚的な話ですが、本当に「強い女性達」というのはこういう方々だなあとつくづく感じています。(私もよく「強い人!」みたいに言われるのですが、「いやはや、そんな!」です。)


Ewaさんを頂点に、関わる全ての人達が一丸となって取り組めたプロジェクトだったなと。厳しくとも、全員がこれだけ信頼してついていける演出家さんはなかなかにはいないなと感じました。


また、『ハチ公』は、子供の頃から好きな話だったこと。さらには、ネットで調べたレベルですが、人形劇で上演された情報を見つけることができなかったので、初めての人形劇化!?と、私自身のモチベーションが上がるプロジェクトでした。


ですが、Ewaさんと『ハチ公』について調べ、打ち合わせを重ねることで、つくづく劇にしづらい話だなと感じたのも事実です。というのも、『ハチ公』は物語ではなく、「実際にあった話」だからです。教授が亡くなってしまう転換はありますが、基本的にはハチの一生を描いたものであり、子供向けに描かれた昔話と比べるとドラマ感がないこと。


また、この劇に出演する役者の数から考えると(合計6名の俳優+テクニカルサポート3名)、登場人物がかなり多い事(駅などにいる群衆を含めて)。駅に行く、待つなどの繰り返しが多く、全体を構成するにあり、何をとるかとらないかの取捨選択においても、Ewaさんの演出力が光ったと思います。


舞台美術の構成では、時間の経過、日本の四季を「鍵」にして考えていきました。ハチも、赤ちゃん、子供、大人、老体と4体制作しました。現実の話なので、なるべくリアルな人形をと、ハチの骨格システムやハチの毛皮など結構実験を繰り返しました。


俳優さんではハチ公を演じたAgata Słowikさんと、教授を演じたMaciej Owczarekさんが、本当に素晴らしかったです。若い二人のモチベーションと情熱がこの作品を大きく引っ張ってくれたなと思います。


また、「若い」といえば、Teatru „Maska" w Rzeszowi劇場の工房主任のMarta Ożógさん。27歳と一番年下で美人な彼女が、工房トップをしているのですが、今回私がジェショフ滞在中はずっと仕事度外視で付き合ってくれました。


色んな国にいき、色んな工房で仕事をしきましたが、彼女ほど朝早くから夜遅くまで付き合ってくれた工房の人は初めてです。さらには、大道具制作から、溶接、エアースプレー着色までマルチにこなすPiotr karpさん。彼ほど臨機応変にデザイン変更を嫌な顔せず対応してくれる、さらには状況に応じて様々なアイデアを出してくれる人はなかなか会ったことがありません。また、Mariusz Habaさんは、ハチ公の細かいシステムを沢山考え制作してくれました。また、もう一人のマルタ、Marta Kawaさんは、着物衣装の早着替えのためのシステムを一手に考えて制作してくれました。


『ハチ公』への現場は、実際にプラハージェショフ間は結構遠く…、4回往復したのですが、それでも私不在の期間が長かった時期もあり、工房の皆さんが頑張ってバックアップをしてくれました。本当に感謝です。



また、今回の『ハチ公』では、日本のできることをできるだけプロジェクト 代表兼、Lalala アーティスティックスタジオ エグゼクティヴ・プロデューサーのしおみえりこさんのご協力により、東日本大震災にて被災した着物を舞台衣装として提供して頂きました。


『ハチ公』の舞台が1920年代の話であり、被災した着物達、舞台全体のキーにしていた「時間」を経た着物達の持つパワーが本当に助けになってくれたなと思いました。


着物選びでは、人形劇の世界ではダイダイ大先輩の人形遣いの黒谷都さん。


小道具選びから始まり、舞台美術デザインのアシスタントを含め、日本のサイドでかーなり暗躍してくれた映像作家・新保瑛加さん。


16キロ以上にも及ぶ着物の日本ーチェコ間の郵送にお付き合いくださいました、大野洋平さん、小島靖史さん。本当に、感謝です!


沢山の方に見ていただけることを願っています!

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